010 デザインと技術はせめぎ合うほうがいい[杉山製作所+股旅ビルダー

特注鉄製品のスペシャルメーカー

高井邸のスイングアーム照明のアームとシェード、ペンダント照明の高さを調節するバランサーと吊り金具、
変形多角形テーブルの脚部の製作パートナーとなったのがカモクラフト。広島の建築家やデザイナーから引く手あまたの、
鉄の特注製品メーカーです。取締役の村田進さんの案内で、工場見学をさせてもらいました。
沖田の代表・沖田憲和はカモクラフトに対して、「感度が鋭い。相談すると返答がスムーズで、ひとつ上の提案を返してくれる。
パートナーが違うとできあがるモノがこんなに違うのかと思わせる鉄のクラフト工場」と、信頼を寄せています。
デザイナの村澤一晃は、「村田さんは家具が好きだそうです。設計者やデザイナーと同じ気持ちで向き合ってくれるので、
大事なポイントや勘どころを共有できるクラフトマンで技術者だと思います」と語ります。


カモクラフトの作業場からは、たしかに独特な雰囲気を感じます。
そこここに置かれている製作途中のものがありきたりな製品でないせいなのか、
仕事の内容によって自然に工場全体が創造的な雰囲気をかもし出しているのか。
村田さんに話を聞くと、「カモクラフトは父が始めた工場で、自動車部品を下請けでつくっていました。
量産品が中心でしたがしだいに特注品が増え、車から建築、店舗、住宅に移行して
鉄骨やガレージが多かったのですが、だんだん細かい仕事が増えてきた」ということです。

モノの成り立ちが分かると完成品が分かる

村田さんの話を聞いていると、図面を受け取ったり相談を受けて、ホイホイと簡単につくるメーカーではないことがうかがえます。
設計者やデザイナーに厳しい姿勢で向き合うメーカーです。

村田「モノの成り立ちを知らないでデザインする人が多くなっているように感じます。
どうやってこれができあがっているのか、肌感覚がないような。CGのせいなのかな。つくりたいものを考えたら、
どうやってつくるか悩んでから持ち込んでほしい。写真を持ってきて、これつくってなんていうのはダメです」

村澤「股旅社中の取り組みも、そもそもそこが原点でした。もともと住宅は、建具も家具も小物もぜんぶをつくっていたのが、
工業化が進む世において買ってきたものを寄せ集めてつくるような家も出てきた。
そのような状況に問題意識を持って特注品づくりに取り組み、それがなぜ必要なのかを追求するには、
モノの成り立ちを知る、つくる現場のすべてを知ることが大切だと考えています」

村田「知りすぎるのも良くないという人もいますが、モノの成り立ちが分かると、完成品のことがより分かると思うのです。
材料、手間、つくりが分かれば、コストや時間ことも勘が働く」

村澤「同感です。デザインって、そういったさまざまなことの知恵の集積だと思います」

村田「そういうことを悩んだり考えた上での図面や相談事を持ってきてもらうと、こちらも返しやすい。
簡単ということでなく、より良いものに向かって考えやすいということです。デザインと技術はせめぎ合うほうがいい。
そういう人とのやりとりのほうが、職人も接点が持てて気合が入る。技術的なことを知ると萎んでしまうというのであれば、
それはそこまでの人ということではないでしょうか。
だから、私たちも設計やデザインのことはよく考えて理解することに努め、その上で一緒に取り組もうと臨んでいます」


モノづくりのガーデンダイニング

工場を見学させてもらったあと、さらにお話を聞くため案内していただいたのは、
工場のいちばん奥から屋外に出たところのガーデンダイング。森に囲まれた雰囲気で、ほぼアウトドアです。
大きな無垢板天板のテーブルが置かれ、自作のベンチや椅子が並んでいます。
薪のかまどがあり、羽釜、大鍋、鉄鍋が置かれています。村田さんに淹れてもらったコーヒーを飲みながら周囲に目を向けると、
葉を茂らせた木々からは木漏れ日が注がれ、様々な花が咲いています。小さな畑があちこちにあり、養蜂箱が置かれていたりします。
工場に向かうときに見かけた鶏小屋も、カモクラフトのものでした。
村田さんに畑は趣味なのかとたずねると、「工場の仕事がなくて困ったときに食べるためですよ」と。
それはただの冗談ではなく、いろいろな時代、厳しい社会状況も乗り越えてきたことを感じました。


このガーデンダイニングは、カモクラフトのスタッフとゲストが利用するだけでなく、
陶芸サークルの人たちが作品を焼いたり集いを楽しんだりする場としても提供しているそうです。
単なる憩いの場でなく、ものづくりに必要な精神や思考力を刺激し育んでくれる、そんなアーティスティックな庭だと感じました。

上手で対応力があるパートナーはありがたいですが、加えて、刺激的でときに厳しい言葉で足りないことを指摘して、
より高みに向かってくれることが何より信頼できることです。股旅社中の活動も、そういう関係のパートナーシップを継続していくことです。