001 空間と一体でデザインしたソファダイニング [創建舎:ソファベンチとカウンターテーブル 第1話]

創建舎がつくる意味と意義があるソファ

創建舎の代表・吉田は、股旅社中を始めたきっかけをつぎのように話しました。
吉田「社員大工で建てるのが創建舎の特徴の一つですが、設計・施工の連携を生かした収納づくりは得意でした。
同様の技術でつくる板材のベンチもプランに取り入れることがありました。
ただ、ソファづくりのノウハウはなく、造作ソファがつくれる工務店になりたいと思っていたときです。
家具デザイナーの村澤一晃さんと股旅社中活動のことを知り、
取り掛かっていた物件のダイニングソファのことを相談してみました」

創建舎と定期的にワークショップを開催するきっかけとなったこのソファについて村澤は、

村澤「造作ソファは、間口に合わせてぴったりサイズでつくればいい、というものではありません。
既製品のソファでは満足しきれないことをどう解決するか。また、住まいと同様に、
それを創建舎がつくる意味と意義が明確でないとモノを生み出す道筋は見えてきません。
創建舎の場合、首都圏の工務店であり、敷地や床面積に余裕がないことが通常のケースということなります。
ですから、そういったタイプの施主の暮らしと住まいにとって、
何が必要で何が要らないのかを突き詰めて本質に迫ることからデザインが始まります」

吉田「最初はソファだけをお願いするつもりでいました。ソファの寸法とか、ソファを置く空間の寸法とか。
しかし進めていくと、ソファベンチだけでなく、カウンター収納、ダイニングテーブル、テレビボード。
すべて一体で捉えながら、空間のしつらえを詰めていくことができました。
社内スタッフの担当箇所も村澤さんのソファ、テーブルとコラボレーションする形になり、
家具と空間を一体でつくりあげることが実践できました」

デザインは現場で生まれる。実験、実証、実感。

村澤「通常のソファには、座角がつきますが、この家のソファーベンチは座の下を収納として活用するため、
座はフラットになります。すると、座り心地の鍵をにぎるのは、背もたれになります。
形状、高さ、背の角度など。こうしたことは、一人一人好みや体格によって違うことですが、
現場で原寸で実験して、違いを実証し、これだと思える答えを実感することが一番だと思うし、この方法が僕のデザインです」

吉田「村澤さんの現場で実践するデザインは、モノをつくり出すだけでなく、設計のスタッフにも社員大工にも、
様々な刺激とノウハウを注ぎ込んでくれることが目に見えて分かります。
回を重ねるごとに、創建舎がレベルアップしていると自負しています」

村澤「このソファとテーブルのワークショップは圧巻でしたね。通常は、
メーカーに原寸のモックを作ってもらい、現場に持ち込んでそれを確かめるということをやるのですが、
このときはソファの『座の奥行き』、『背の高さ』、『背の角度』、『テーブルの高さ』を検証しようとしたところ、
スタッフの坂本さんが設計、社員大工の方が製作して、これらの項目を確かめられる可動式のモックというか、
特製のアジャストマシンを用意してくれたことに驚きました」

この造作ソファとカウンターテーブルのワークショップが行われる日には、
股旅メーカーの園田椅子製作所の園田をはじめ、イシハラスタイル、沖田、ベガハウスも参加。
村澤が驚き絶賛したソファとテーブルを検証する特製アジャストマシンを現場に持ち込み、
創建舎の設計スタッフと社員大工とともに熱のこもった実証が行われました。その様子は第2話でご紹介します。

〈第2話へつづく〉