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集まって建築の話をしましょう
[國本建築堂]

 

ていねいな思考 ていねいな実践

股旅社中の第3期に入会した尾道の國本建築堂を、沖田のメンバーと股旅デザイン班の中村圭吾、堀達哉と共に訪ねました。 國本建築堂が社名に「堂」とつけたのは、堂は神社仏閣につけられるように人々が集う場所という意味があり、「人々が建築に関して集まり、話をするところ」でありたいという思いを込めた社名ということです。 今回の参加者は全員初めての訪問で、新しい会員の家づくりに興味津々。 完成邸の見学、家具開発のワークショップへの参加を通じて感じたことは、とてもていねいに家づくりを考え、ていねいに家づくりを実践しているということでした。


新築ショーハウス「せせらぎの家」

國本建築堂の新築事例として、完成直後のショーハウス「せせらぎの家」をまず見学しました。 場所は、尾道市内ですが山の方に車を走らせて20分くらい行った市のはずれで、このへんの脇道を入っていけばぽつんと一軒家がありそうな雰囲気の郊外です。
敷地の東側には小川がありその向こうは灌木に覆われた小高い斜面で、野生動物もしばしば現れるのだとか。 このロケーションに家を建てたいと考えた建主が、この立地を活かせるつくり手を探して國本建築堂と出会ったということです。
國本建築堂の新築のコンセプトは、「土地を読む」、「余白のある空間」、「使い勝手を大事に」、「内と外を結ぶ」、「目に見えない心地よさ」の5つです。 これらのすべてを叶えた國本建築堂の家づくりが、このショーハウスで体感できました。
國本建築堂は、先に行われた股旅社中デザイン競技会に初参加で最優秀デザイン賞に選ばれましたが、縁側にセットする脱着式の小テーブルと焚き火ボウルに加えて、新しいアイテムとして物干しフレームの試作品が生み出されていました。 つくったら、またつくる。國本建築堂のメンバーは人あたりが穏やかな面々ですが、家づくりやものづくりになると、妥協を許さずとことんやり抜く烈しさも内に持っているようです。



リノベーションの家「西久保展示場」

次に訪ねたのは、築50年の木造住宅をフルリノベーションした家で、実際に家族4人が暮らす家を展示場として予約方式で公開しています。
道路から石の階段を降りていく敷地に建つこの家。機材・資材・廃材の搬入出を考えたら、新築の方が安くあがるのではないかと思いますが、 新築同様にリノベーションにも力を入れる國本建築堂は、尾道の建築を生かしつづけることを理念としています。生かせるものは長く生かし、 時間を経て魅力が増したものに再生の手を加え、さらに愛着が深まるものに蘇らせる、という仕事です。
この展示場では、初めてのお客様を案内するときの様子を住まい方アドバイザーの加藤一実が実演してくれました。 キッチンプランを説明してくれるのですが、目の前のキッチンをそのまま語っているだけなのに、なぜこうなっているのか、なぜそうしたのか、理由も話してくれま す。 すると、たちまち暮らし方が見えてくる思いがして、話の途中で「あー、この人たちに家づくりをお願いしたい」、という気持ちになってきます。 営業的、セールス的なトークは一切なしです。沖田の代表、沖田憲和も、すっかりキッチンの話にのめり込んでいました。


建築でも家具でもない空間

公開ワークショップでは、スタッフの宮内友丘森が中心となって進めている「子どもの空間」に参加させてもらいました。造作家具でなく、 プロダクト的な家具でもなく、空間をつくりだす独創的なプロトタイプを目の前にして、現状の問題点を洗い出し、どう改善・改良するか活発な意見交換が行われました。 木工の専門的・技術的なことを検討したり、使い方の新アイデアが飛び出したり、はたまたこの空間家具の流通の仕方を工夫したら生産の実現に近づくのでは、と、さまざまな意見やアイデアが行き交いました。
「子どもの空間」がどうブラッシュアップされていくか、楽しい空間家具が完成することを楽しみにしたいと思います。