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どうやってONE TEAM を実践するか
[ベガハウス・村澤一晃]

 
ワンチームという言葉がよく使われるようになりました。「一丸となって」というように、昔から定型句的に使われてきた言葉でもありますが、 2019 年にラグビー日本代表のスローガンとなったONE TEAMは、どういうやり方でどのように一つになるかという、中身の濃密さによって広く知れ渡りました。
会社の能力の向上のために、ベガハウスがワークショップの取り組み方を変えていたことは、このコンテンツ・股旅マンスリー020号で記事にしました。 ラグビー日本代表に先んじて、「チーム体制」と呼んでONE VEGA活動に取り組んでいたのです。 そして、新体制になってからの成果が目に見える形になってきたということで今回、ベガハウスのワークショップに参加してきました。



プロフェッショナルを磨くとりくみ

数年前にベガハウスではワークショップを行う体制を一新しました。それまでのワークショップでは、ベガハウスが課題を掲げ、 家具デザインからの解決を目指してデザイナーの村澤一晃が案を提案し、それをベガハウスと村澤が共同で練り上げていくというやり方でした。 このやり方を改めて、チーム体制と呼ぶやり方にシフトしました。 社内スタッフを3名ほどの小チームに分けて、それぞれのチームが1物件1プロジェクトとして、ベガハウスが手がけるすべての家づくりで何かしら新しいものづくりへのチャレンジが行われるというものです。 課題の設定もデザイン案も、すべて自らが推し進めるやり方です。
いわゆるフラット組織的な体制です。一人ひとりが能力を高めて、課題共有の密度をチーム内で高め、結果としてチームとチームの集まりである会社の能力を高めるということです。 いままでやってきた仕事はそのまま行いながら、さらにゼロからの仕事もやりとげるということですから容易ではありません。 ラグビー日本代表のONE TEAMの取り組みと同じことだと思います。やり方を描くだけでなく、それを実際にやることが難しいことです。 ちなみに、デザイナーの村澤の役割は、各チームの相談役となって、ベガハウス全体のデザインディレクションを担うことになります。
この容易ならざるプロフェッショナルを磨く取り組みを数年間実践してきた一つの成果として、今回、長田友紀・植田宗一朗・上大川眞子のチームが進めてきた家具プロジェクトのワークショップが行われました。


日本一の竹を使った土間スツール

長田チームが取り組んだのは、土間で使うスツール。汚れたら簡単に水拭きや水洗いができて、軽くて動かしやすくて、スタッキングができるもの。 機能要件を満たすだけなら、世の中には屋外や庭で使う家具が多く存在します。しかし、ベガハウスの空間にふさわしいものがないということで、オリジナルの土間スツールづくりに着手しました。
目をつけたのは、鹿児島が日本一の竹林面積を誇る竹です。ザルやカゴや家具、竹は軽くて丈夫で水に強い材料として、さまざまな生活用品に昔から使われている素材です。 長田らは編んだ竹を座に用いたいと考えましたが、この話を受けてくれる竹職人さんがなかなか見つからなかったそうです。 そこで、県が運営する竹産振興センターを訪ねたところ、竹編みの技術リーダー・川添さんと出会いました。川添さんは話を聞いて樽を締めるタガで座枠をつくり、座面は竹編みでつくることに取り組んでくれました。
最初の試作品は、座枠のタガの強度が不足していました。そこで、川添さんと強化方法の検討を重ねて、竹座の試作を続けてきました。脚部は鉄製として、股旅社中の会員メーカー・杉山製作所と共同で製作しました。
今回のワークショップで用意されたものは3回目の試作品。完成度の高さがうかがえました。長田チームはさらなる改善を川添さんと進めるようですが、おそらく近いうちに完成することでしょう。
この土間スツールで感心したのは、製品の意匠性や機能・構造のことだけでなく、2年間にわたるプロセス全体がすばらしい成果だということです。 前例がないことをどう実現するか、知識と経験を超えたものをどうつくりあげるか。それは、ものを生み出すプロの力です。 チーム 体制の成果は、このスツール自体とここまでものにしたプロセスが証明していると感じました。



チーム体制、もう一つの成果の予告

ベガハウスがチーム体制に取り組んでつくってきたもので、もうひとつトピックとなる事例があります。
股旅マンスリーの記事014号で紹介している股旅社中デザイン競技会の入賞作品、ベガハウス・谷征紀が発表した「Felt Cot(フェルト・コット)」が、商品化されることに向けてプロジェクトが進行していることです。 これは、同競技会でテーマ素材となった硬質フェルトを供給してくれたメーカーに会の結果報告をしたところ、「Felt Cot」を商品化したいとお申し出をいただいてのことです。
競技会ののち、商品化にむけて試作がブラッシュアップされ製造のための型を起こし、谷のデザインでパッケージの準備をすすめ、まもなく発売になる予定です。 この取り組みもベガハウスのチーム体制のもとで生み出されたもので、これが股旅社中の枠を超えて一般流通される商品になれば、股旅社中としてもたいへん喜ばしい結果です。 ベガハウスのチーム体制、股旅社中デザイン競技会から生まれた「Felt Cot」のデビュー、楽しみにしています。